歯周病が進行するとガンなどの重い病気にかかるリスクが高くなります
重い歯周病を持つ人は軽い歯周病を持っている人やまったく歯周病がない人と比べて実に24%もガンの発症率が高い!
アメリカ・タフツ大学医学部のDominique Michaud氏とジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ校のElizabeth Platz氏らの研究論文が「アメリカ国立ガン研究所報」に発表されました。
研究対象となったのはメリーランド州、ミネソタ州、ミシシッピー州、ノースカロライナ州の居住者でアテローム性動脈硬化症のコミュニティ(ARIC)に参加している7466人を対象におこなった結果です。
注)アテローム性動脈硬化症とは、アテロームと呼ばれるローソクの蝋のような沈着物(コレステロール、脂肪などの物質)が動脈の内側に蓄積したものです。
じつは口の中の環境とガンや脳卒中などの重い病気は深く関係していることが様々な研究でわかってきています。
口の中には実に多くの細菌が生息しています。
問題はその中の歯周病菌が血液の中に入ることです。
では歯周病菌はどのようにして入るのでしょうか。
歯周病菌は2つの経路で身体の中に入っていきます。
血管の中に入る
歯周病になると歯ぐきは炎症を起こし出血しやすい状態になっているので、食事や歯みがきの時に歯周病菌などが血管の中に入りこみます。
また、口の中に傷を負ったり、むし歯や抜歯などの歯科治療により血管の中に入ってしまいます。
これを菌血症といいます。
菌血症とは本来なら細菌がいない血液中に細菌がいる状態のことです。
しかし、一時的に歯周病菌が血液の中に入っても、健康で免疫機能が正常に働いていればすぐに免疫細胞が細菌をやっつけてくれるので問題はありません。
ところが、免疫力が低下していると歯周病菌により血管に炎症が起こり血管内皮の機能が低下します。
その結果、血管壁へ脂肪が沈着し、それが原因で血管が傷を負うとそこに血が固まり血栓ができます。
この血栓が動脈硬化や心臓発作、脳卒中を引き起こす原因になります。
唾液と一緒に入る
食事をすると食べ物と一緒に唾液も胃へ流れていきますが、口の中に生息する細菌も胃へ入ってしまいます。
この場合も胃が健康で正常に機能していれば、入ってきた歯周病菌などの細菌は胃酸で溶けてしまうので問題はありません。
しかし、体調不良や胃の病気などで胃酸の分泌量が少なくなると細菌が生きたまま腸へ運ばれます。
歯周病菌の中でもジンジバリス菌が腸へ入ると腸の防御機能が低下し、細菌が生み出す毒素の量が増加します。
腸内環境が劣悪になると便秘などの症状があらわれ、やがて大腸ガンになるリスクが高くなります。
このように、歯周病は単なる口の中の病気というものではなく、重い病気を引き起こす引き金になる怖い存在です。
予防のため、自分の口の状態を診断してもらいましょう。
歯周病やむし歯にかかっているなら、それを治すことです。
定期的に歯科医院でチェックしてもらい、毎日の口腔ケアを心掛けることが、将来重い病気で苦しむことなく元気で長生きするためにとても大切なことです。